山を“感じる”靴|Vivobarefoot Primus Trail FG 3.5を実際に使ってわかったこと

登山

今回は、最近登山界でも耳にする機会が増えてきた「ベアフットシューズ」。
その中でも、私が実際に使ってみた Vivobarefoot(ビボベアフット) Primus Trail FG 3.5 について書いてみようと思います。

ここ数年で注目度が上がってきた印象がありますが、実際には数年前からトレイルランナーやUL志向の登山者など、コアな層の間ではすでに知られていたブランドです。
私自身も「足で地形を感じる」という考え方に共感し、少しずつ関心を持つようになりました。

この記事では、「安全な登山靴」ではなく「安全に登るための身体をつくる靴」という視点で、Primus Trail FG 3.5の使用感や、登山を通して感じた変化をまとめています。


登山靴の変遷と、“感じる登山”への関心

これまで使ってきた登山靴(冬靴を除く)は、キャラバン グランドキング、ザ・ノース・フェイス ベクティブ インフィニティ、サロモン Xウルトラ GTX、そしてアルトラ ローンピーク 8とアルトラ ティンプ ハイカー GTX。
どれも快適で信頼できる靴でしたが、登山を重ねるうちに「もっと自然に、身体で山を感じたい」という思いが強くなりました。
その流れの中で出会ったのが、Vivobarefootです。


左から「Altra Lone Peak 8」「Altra Timp Hiker GTX」「Vivobarefoot Primus Trail FG 3.5」

靴ではなく、“身体の使い方”を変える道具

Vivobarefootは「裸足感覚」をコンセプトにしたシューズブランド。
軽さだけでなく、人間本来の足の動きを取り戻すことを目指しています。
登山で使うには向き不向きがありますが、私はこれを“安全な靴”というよりも、
“安全に登るための身体の使い方を学ぶ靴”と捉えています。


店頭で話を聞いてから、Primus Trail FG 3.5を購入(サイズ選びの考え方)

SNSでも徐々に注目が高まるなか、今年札幌にVivobarefootの直営店がオープンしました。
実際に足を運び、店員の方に丁寧に話を伺ってから購入を決めました。

私の足の実寸は24.5cmで、アルトラのローンピーク8はUS7(約25cm)ティンプGTXはUS7.5(約25.5cm)を履いています。
そのうえで、Primus Trail FG 3.5はEU40(約25cm相当)を選びました。※実際の内寸(インサイドレングス)は異なります。

靴本来が柔らかく、アッパーがしなやかに動くため、アルトラ以上にサイズ選びが歩き心地に直結すると感じました。
店員さんからも「足指を広げても前方に当たらないこと」「つま先にしっかり余裕を持つこと」が大切だとアドバイスを受けました。

Vivobarefoot公式サイトでも、つま先部分には約1.25cm(6〜14mm)ほどの余裕を持たせることが推奨されています。
実際、店頭で試着した際に、指を広げても圧迫されず、かかとが安定するサイズ感を確認できました。

また、Vivobarefootの靴はモデルごとに大きなフィット感の違いはなく共通のフットシェイプ設計を採用しています。
そのためサイズの目安は比較的つかみやすいですが、最終的には実際に履いて、自分の足形や甲の高さに合うか確かめることが重要だと感じました。


ミッドソール(中間層)が入っていないため、柔らかい。

実際に登山で使ってみて感じたこと

履いた瞬間から、足裏の感覚がまったく違いました。
岩の角、土の柔らかさ、木の根の起伏まですべてが足から伝わってくる。
最初のうちはその繊細さに戸惑いましたが、「自分の足で登っている」という実感が今までよりも強くなりました。

実際に、藻岩山の日帰り登山や、赤岳から白雲岳・北海岳を経て黒岳へ抜ける縦走でも使用しました。
軽量さと自由度の高さから、足の運びが自然で、歩いていて心地よさを感じました。
一方で、岩場では慎重な足運びが求められ、まさに「身体で学ぶ登山」という感覚。

クッション性はほとんどありませんが、そのぶん接地が丁寧になり、
下山時のフォームも以前より安定してきたように思います。


黒岳手前から大雪山全体の景色

注意点と、それを理解して使うことの大切さ

もちろん、この靴には明確な弱点もあります。
尖った岩を踏むと痛いし、濡れた岩では滑ることもある。
長距離を歩けば足裏やふくらはぎが張ります。

けれど、それを“欠点”と考えるのは少し違うと思っています。
この靴を選ぶということは、「その感覚を通して身体を学ぶ」ということ。
地面の硬さや不安定さを足が感じ取るからこそ、自然と姿勢や荷重のかけ方が整っていく。
それこそが、Vivobarefootを登山で使う最大の価値だと感じます。

落ち葉や木の枝、石の感触が伝わる

足のトレーニングとしての「トーガ」

ベアフットを履くようになってから、日常でも「トーガ(Toe+Yoga)」と呼ばれる足指トレーニングを取り入れるようになりました。
足指を開く、タオルを掴む、足裏を動かす──そんな簡単な動きでも、続けていくと登山時の安定感が違ってきます。

最初の頃、私はまったく足指を動かせませんでした。
「こんなに足を使えていなかったのか」と驚くほど思うように動かず、
足裏の筋肉がどれだけ眠っていたのかを実感しました。

けれど、毎日少しずつ続けていくうちに、足の感覚が変わっていきます。
地面を“つかむ”感覚が強まり、足裏全体でバランスを取るようになった。
“靴に頼る”のではなく、“自分の足を育てる”という考え方を、まさに体で感じています。


靴の使い分けと、これからの登山

もちろん、どんな山でもPrimus Trail FG 3.5で行けるわけではありません。
今もローンピーク8やティンプGTXは主力として使っています。
そのうえで、自分の体力や技量、ルートの難易度を見ながら、“いける山”ではPrimus Trailを選ぶ
その判断をする時間もまた、登山の楽しみのひとつです。

「どの靴を履いて、どう登るか」を考えることが、登山をより丁寧にしてくれる気がします。


まとめ:学びをくれる靴

Vivobarefootは、ただの登山靴ではなく、自分の身体と向き合うきっかけをくれる靴。
「どんな山もこれで登る」ための靴ではなく、「山と自分をつなぐ感覚を磨く」ための靴です。

札幌店のスタッフの方も言っていましたが、まずは話を聞き、実際に履いてみること
ネットの情報だけで完結せず、自分の足の形や歩き方を理解したうえで選ぶことが、
ベアフットを安全に、そして楽しく取り入れる第一歩だと思います。


これからのレビュー予定

今後は、これまで使ってきたキャラバン、ノースフェイス、サロモン、アルトラの登山靴についても、
それぞれの特徴や使い分けを改めて整理していく予定です。
また、冬季用として購入した「Tracker Winter II SG」も、雪の季節になったら実際に使用し、
その履き心地やグリップ感などをレビューする予定です。

山の楽しみ方やギアの使用感などをテーマに、これからも書いていきたいと思います。

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