しばらくブログの更新が止まっていました。
この数ヶ月、引っ越しという名の「終わらない段ボールとの格闘」と仕事の忙しさが重なり、なかなか山へ向かう余裕が持てずにいたからです。
新しい家での生活がようやく形になってきた2月末。「そろそろ、一歩踏み出そう」となまった身体を動かすために、リハビリを兼ねていつもの藻岩山へ向かいました。
1. リハビリの現実
久しぶりに歩き始めてすぐ、自分の体力の衰えを突きつけられました。登り始めてわずか10分。肺が「空気が足りない」と訴え始め、足取りはすっかり重くなっています。「藻岩山ってこんなに斜度があったっけ?」と、苦笑いしてしまいました。
引っ越しの時にあれだけ重い段ボールを運んだのだから、それなりに体力は維持できているだろう。……そんな淡い期待は、最初の登りであっさり崩れ去りました。日常生活で使う筋肉と、山を登る筋肉は、やはり全くの別物ですね。
それでも、2月末の藻岩山は道が完璧に踏み固められていて、今の僕にはちょうどいい優しさのトレイルでした。自分の呼吸音に耳を傾けながら、ゆっくりと高度を上げていきます。
2. 雪道を「掴む」:Tracker Winter II SG の使用感
今回の楽しみは、ずっと箱の中で眠っていたVivobarefootの『Tracker Winter II SG』を試すことでした。雪道でビボの靴を履くのは、僕にとってこれが初めての経験です。
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地面を掴む楽しさ
普段の冬靴はガチガチに硬いものが多いですが、この靴は驚くほど柔らかいです。雪の上でも足裏がしなやかに動き、地面を「掴んでいる」感覚がダイレクトに伝わってきます。
厚底の靴にはない、足裏全体で路面を捉える感覚。滑りやすい雪の上だからこそ、この「捉えている」という確かなフィードバックが、かえって安心感と安定感に繋がるように感じました。


暖かさと防水性
「裸足感覚なのに寒くないの?」と思っていましたが、内側のボアと断熱インソールのおかげで、足元はずっと温かいままでした。自分の体温が靴の中でじんわりと巡る感覚は、とても心地よいものです。

また、2月末の溶けかけた雪の上を数時間歩きましたが、防水性能もしっかりしており、中まで濡れることはありませんでした。レザーのしなやかさと防水性のバランスは、想像以上に信頼できるものでした。
3. 装備のこと、相性のこと
今回は最初からチェーンスパイクを装着して歩きました。靴が柔らかいので、スパイクのゴムで締め付けられて足が痛くなるかも……と少し懸念していましたが、実際は全く問題ありませんでした。しなやかですが芯が強く、最後まで快適に歩き続けることができました。
軽アイゼンも装着はできそうですが、靴がしなやかなので、この「足裏感覚」を活かすなら、やっぱりチェーンスパイクがベストパートナーだと感じます。
4. 山頂で味わう、最高の一服
今回の目的の一つは、山頂でゆっくりコーヒーを飲むことでした。持ってきたのはINIC coffee。お湯を注ぐだけのインスタントですが、冷えた身体に染み渡るその味は、最高の一杯でした。
山頂の冷たい空気の中で、温かいカップを握りしめる。忙しかった日々を乗り越えて、ようやくたどり着いたこの場所で味わう香りは、格別なものでした。ようやく一息つけた、そんな実感が湧いてきました。
5. 脳内の「散らかったタブ」を閉じる時間
最近の僕は、新しい生活や仕事、さらに勉強中のことなどで、頭の中が常にパンパンでした。いわば、ブラウザのタブを100個くらい開きっぱなしにして、ファンがフル回転しているPCのような状態です。
けれど、雪を踏みしめる音を聞きながら一歩ずつ進むうちに、あんなに騒がしかった思考のノイズが、少しずつ静かになっていくのが分かります。山を歩くことは、僕にとって「脳内の整理整頓」のような時間です。山頂に着く頃には、余計なタブが一つずつ閉じられていき、最後にはいい意味で「空っぽ」の状態になれました。
このスッキリとした感覚があるから、僕はやっぱり山が好きなんです。
6. また、ここから歩き始める
山頂から眺める札幌の街は、いつも通りそこにあって安心しました。あの中のどこかに自分の生活があり、明日からはまた忙しない日常が始まります。けれど、山に登る前と今とでは、地面を踏みしめる足裏の感覚が少しだけ違っています。
Tracker Winter II SGという新しい相棒を通じて、再び自分の身体感覚を取り戻し、生活の重心を整えることができたような気がします。筋力や体力の衰えは、これからまた少しずつ、この山に通って埋めていけばいい。
2月末。北海道の冬がその白さを失うまでには、まだ少し時間があります。次はどの道を、この「裸足」で掴みに行こうか。そんなことを考えられるようになったことが、今回のリハビリ山行における、静かな収穫でした。


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